ⓔコラム17-10-23 bispecific T cell engager (BiTE) 抗体とCAR (chimeric antigen receptor)–T療法

 いずれもここ数年で急速に発達した治療法である.bispecific T cell engager (BiTE) 抗体は,腫瘍表面上の特異抗原と結合する抗体と,T細胞表面に発現するCD3に結合する抗体を結びつけた抗体製剤である.BiTE抗体はT細胞を腫瘍細胞に近接させ,T細胞に腫瘍だけを攻撃させる製剤で,多発性骨髄腫に対してはB cell maturation antigen (BCMA) を,B細胞性急性リンパ性白血病に対してはCD19を標的とした製剤が開発されている.T細胞は近接した腫瘍を攻撃するため,T細胞が全身のさまざまな臓器を攻撃する可能性が高いPD–1抗体と異なり,全身の副作用は減少すると考えられている.

 一方CAR (chimeric antigen receptor)–T療法は,患者のT細胞を採取し,腫瘍特異的表面抗原に結合する蛋白とT細胞増殖と活性化を刺激する蛋白を結合させた遺伝子を導入し,遺伝子改変したT細胞を試験管内で増殖させた後,患者体内に戻すという,細胞免疫治療である.同種造血幹細胞移植に匹敵する効果が期待される新しい治療である.

〔半田 寛〕